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「コーヒー置いときますね」
ブラックコーヒーを一つ。
仕事中である三上さんのデスクにカップを置いた。
「サンキュ。悪いな」
「いえ」
三上さんは今夜は残業だ。
昼に抜けさせてしまったこともあるが、最近は多くの仕事を抱えているので、遅くなりがち。
家が近いこともあり、はるの気配がないため、最近では一人で帰宅することも増えていたものの、今夜は昼間の件があり、彼を待っているところだ。
とはいえ、私は残ってまでする仕事がないので、邪魔にならない程度に三上さんの部屋を片付けていた。
「もう少しで終わるから、ゆっくりしとけよ」
「大丈夫ですよ」
ふふっ、と笑うと、三上さんがコーヒーに口を付けつつまじまじと私を見つめる。
好きな人に見つめられるのは恥ずかしいものだ。
はるに見つめられても、照れ臭さは感じなかった。
「……なつき」
「へ……」
突然の名前呼びに驚くも、胸が喜ぶ。
「いや、どうして原口は名前で呼ぶようになったのかと思って」
“なんだ……”
すぐに心はがっかりの声をあげた。
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