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しかし駐車場にははるがいた。
「はる……」
やはり誰よりも怖い人。
恐怖で足がすくむ。
「俺があの人を引き留めとくんで、お客さんはタクシーに乗ってください」
「店員さん……」
「俺、こう見えて黒帯なんで、腕には自信あるんで大丈夫ですよ」
彼は小さく笑うと、はるの方へ足を向けた。
私はタクシーの中へ駆ける。
男の人でもいい人はいるのだ。
そして、強い力は乱暴を働くためにあるものではない。
普通は守るためにあるのだと教えてもらった気がした。
明日、改めてお礼をしようーー。
そう思い、タクシーに乗り込み、近いもののマンションの名を口にした。
さすがにすぐに着く。
運転手に申し訳なかったので、せめてもおつりはいらないとお金を払い、タクシーから降りマンションの中へ駆けた。
「……なつき?」
なんてタイミングがいいのだろう。
三上さんもちょうど戻ってきた時だった。
ホッとした私からは涙が溢れ、彼の胸に抱きついた。
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