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「何かあったのか?」
三上さんの声は心配そうだ。
「もしかして、あいつがいたのか?」
「……さっき会って……」
「……何かされたのか?」
三上さんが私の身体を離し、顔を覗き込んだ。
その瞳は心配と怒りが混じっている。
「なつき、大丈夫か?」
こんな時なのに、胸がわずかにときめく。
「……いえ、大丈夫です。ただ会っただけなので……」
首を横に振る。
「はるにはもう近づかないでって言いました。なんか今、ホッとしてしまって……すみません……」
「そう、偉かったな」
「三上さん……」
「怖かっただろう」
彼は私をギュッと抱き締めて、しばらく背をよしよしと撫でた。
まずはむやみに話を聞き出そうとせず、私の中の不安をとかそうとする彼が好きだ。
こんな彼だから、好きになったのだ。
コンビニでのことを話したのは、それからしばらくしてから。
彼の部屋のリビングに来たときには落ち着きを取り戻していた。
そのため三上さんの留守が気になり、スマホも持たず出掛けたことまで伝えてしまうくらい、私の心は安堵感でいっぱいだった。
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