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「悪い。原口が藤下を名前で呼ぶのが面白くなかったっていうのが本当のところだ……」
三上さんがばつが悪そうに頬を掻く。
「……三上さん」
「なかなか俺、めんどくさいよな」
苦笑いする彼の姿に胸がキュンと縮まる。
ーーヤキモチ。
全然めんどくさいなんて思わない。
「呼んでください!」
「……え?」
「三上さんも“なつき”って……呼んでください」
彼が驚いた顔をする。
勢い余って言ってしまったけれど、恥ずかしくなった。
かぁっと頬が熱を持つ。
「なつき」
彼が素敵な声でゆっくりと発した。
ーードクン。
「……はい」
胸が震える。
ますます恥ずかしくなる。
けれど、嬉しい。
好きな人に名前を呼ばれることが、こんなにも胸を揺らすなんて知らなかった。
たまらず胸を押さえる。
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