心も身体も満たされて

10/23
前へ
/23ページ
次へ
彼はそう言うと頭を撫でて、去ろうとする。 だから私は彼の腕を引いた。 「……三上さん」 「ん?」 「もう一度……してください」 恥ずかしい。 ゆりもいるのに私は何をしているのだろう。 三上さんだって困るはずーー。  だが、彼は優しいので今度は少しだけ長いキスをくれた。 身体中に好きが広がる。 キスなんて、何度もしてきたのにーー。 三上さんとのものは別物。 先日同様、熱さを紛らすために勢いよくシャワーを浴びたのは言うまでもない。 「……あれ、ゆりは……?」 急いであがったつもりだった。 しかしゆりの姿がない。 「なんか今日は帰るってさ。用事でもあるんじゃないか?」 気を利かせたに違いない。 連絡をとろうとスマホを覗くと一件メッセージがあった。 “お邪魔虫は消えまーす。また遊ぼ” 胸がチクリと痛む。 こんないい友人にモヤモヤしていたなんて、私は最低だ。 「私って最低」 つい、ため息と共に溢れた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加