心も身体も満たされて

13/23
前へ
/23ページ
次へ
「ここは……?」 車で走ること30分程、道路の左右には家が挟み並ぶ住宅地にやってきた。 一つ一つの家は大きくて、夜の今でも偉そうに立って見える。高級住宅街という感じだ。 三上さんはその中の一際大きな家の前に車をとめた。 「来ればわかるよ」 小さく笑った彼は私の手を引き、車から降ろす。 「もしかして、三上さんのご実家……?」 まだ彼女になったばかりだが、他に想像がつかない。 「いや、違うよ。俺の実家にはまた近く連れていくから」 ーーかぁ。 顔が熱くなる。 また比べてしまうけれど、はるの時はあんなに嫌だったのに……。 全然違う。 「あ、いえそんなつもりで言ったわけでは……」 「ん?」 「いえ、嬉しいです」 三上さんが優しく微笑む。 素直になることは素敵なことなんだーー。 彼の笑顔に胸がときめく。 「来たのね」 聞きなれない声にハッとした。 「由美、変更して悪いな」 「いいのいいの」 夏木さんだった。 夏木さんと視線がぶつかるとすぐ、彼女は「こんばんは」と笑顔を作った。 “理由がわかるの……?” 私は彼女のように笑顔を返せなかったけれど頭を下げた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加