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「ここは……?」
車で走ること30分程、道路の左右には家が挟み並ぶ住宅地にやってきた。
一つ一つの家は大きくて、夜の今でも偉そうに立って見える。高級住宅街という感じだ。
三上さんはその中の一際大きな家の前に車をとめた。
「来ればわかるよ」
小さく笑った彼は私の手を引き、車から降ろす。
「もしかして、三上さんのご実家……?」
まだ彼女になったばかりだが、他に想像がつかない。
「いや、違うよ。俺の実家にはまた近く連れていくから」
ーーかぁ。
顔が熱くなる。
また比べてしまうけれど、はるの時はあんなに嫌だったのに……。
全然違う。
「あ、いえそんなつもりで言ったわけでは……」
「ん?」
「いえ、嬉しいです」
三上さんが優しく微笑む。
素直になることは素敵なことなんだーー。
彼の笑顔に胸がときめく。
「来たのね」
聞きなれない声にハッとした。
「由美、変更して悪いな」
「いいのいいの」
夏木さんだった。
夏木さんと視線がぶつかるとすぐ、彼女は「こんばんは」と笑顔を作った。
“理由がわかるの……?”
私は彼女のように笑顔を返せなかったけれど頭を下げた。
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