心も身体も満たされて

21/23
前へ
/23ページ
次へ
部屋を静かに覗き込むと、三上さんだけがいた。 夏木さんはどこだろうか、と再び二階へあがろうと思ったが、使用人が下りてくるのが見えたので、洋間に駆け込む。 瞬時、三上さんが私の姿を捉えた。 彼の視線が上から下へ移動するのが心もとなくて、セーターを伸ばす。 ーーしーん。 「夏木さんからお借りしたお洋服なんです。なんだか……すみません」 彼が困っているのが伝わる。 「いや、そういう格好も似合うな」 フォローだろうとしか思えず、首を左右に振る。 「えぇ、いえ、気を遣われなくても……」 「いや、本当。でもあまり直視できないな」 三上さんが頬を掻きつつ、視線を逸らす。 それはどういう意味なのだろうか。 「なつきちゃん、着替えたわね」 夏木さんが今になり姿を現した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加