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「まだ早いけど、誕生日は三上さんと過ごすのかなぁって思って今日にしたんだよ」
「……え、あぁ。でも三上さん知らないよ。私も忘れてたし」
「いや、知ってるでしょう。社長なんだから、社員の情報なんてすぐ……」
ーーピンポン。
ゆりの話の途中だった。
夜に訪れるのは、三上さんくらいだ。
「三上さん?」
「うん。たぶん……」
「出なよ」
「うん」
ゆりに悪いが頬が緩む。
玄関へ駆けるとやはり、三上さんの姿があった。
「お疲れさまです」
「おぅ」
「お仕事、早かったですね」
「今日は早く終わらせてきた。どうだった?大丈夫だったか?」
「はい。昨夜の方いらっしってお礼できました」
へらっと笑うと、後ろから「大丈夫ですよー。なつきをちゃんと見守ってました」というゆりの声が割る。
「こんばんは」
「こんばんはー三上さん」
「久しぶりだね?」
「えぇ、相変わらず素敵ですね。仕事終わりとは思えないくらい爽やかで」
「褒められても何もないよ」
三上さんが両手を上げる仕草をする。
ゆりとくすっと笑い合うのだが、なんだか仲良さげで、胸の奥がチクリと痛む。
私もはるのことが言えないかも。
やきもちを逃がすように笑顔を乗せ「あがられます?」と誘った。
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