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「わーなつきびしょ濡れ」
「……うぅ」
情けない声が漏れる。
三上さんは少しいなくなったがすぐ、バスタオルを持って戻ってきた。
「珍しいな。どうかしたか?」
ふわっと頭からバスタオルを被せられる。
“赤い顔が隠れた?”
そうだといい。
「すみません……」
「いや、俺はいいんだが……結構濡れたな、風呂入って来いよ」
「え……でも」
「風邪引くぞ。ほら、おいで」
三上さんは私の背を押し浴室へ誘う。
「すみません……」
家の配置やかってはわかっている彼なので、浴室まで足を踏み入れお湯を溜め始めた。
「すぐ溜まると思うぞ」
「……はい。すみません」
下唇を緩く噛み、彼を上目遣いに見つめる。
「どうかしたのか?」
三上さんの瞳は心配そうに揺れる。
ヤキモチをやいていたなんてまさか言えない。
無言で俯く。
すると「なつき」と呼ばれたので、顔を上げた。
ーーチュッ。
一瞬のことだった。
唇にキスが落ちた。
「ゆっくり浸かれよ」
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