57人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあこの子は三上さんからとってつけたいです」
「え……いや、いいよ」
三上さんは微妙な顔を見せるけれど、「“りーちゃん”なんてどうですか?」と見つめた。
「りー?」
「はい」
なかなか可愛い名前だと思う。
本人には名前で呼べないくせに、うさぎになら簡単に呼ぶこともできるからいい、なんていう浮かれた提案だ。
「……なつきはそれでいいの?」
「はい」
笑顔を作ると彼がはにかんだ。
「……いや照れくさい。別のにしたら?」
「私だってそうでしたよ」
「仕返しか?」
「そんなことはしませんよ」
「本当かよ?」
彼が小さく笑った。
「本当です。“りーちゃん“がダメなら”りっちゃん”とか……」
「もうどっちでもいいよ」
恥ずかしいのか、ぶっきらぼうに言うので笑ってしまう。
「じゃあ”りーちゃん”がいいです」
「おぅ」
「いいのですか?」
「いいよ」
「ありがとうございます。嬉しい……。じゃあもしまたいつか何かやってくる時は、今度は三上さんの番ということにしましょう」
それから私はバスケットの蓋をそっと開け「ね、りーちゃん」と声にした。
最初のコメントを投稿しよう!