心も身体も満たされて-2

4/22
前へ
/22ページ
次へ
「じゃあこの子は三上さんからとってつけたいです」 「え……いや、いいよ」 三上さんは微妙な顔を見せるけれど、「“りーちゃん”なんてどうですか?」と見つめた。 「りー?」 「はい」 なかなか可愛い名前だと思う。 本人には名前で呼べないくせに、うさぎになら簡単に呼ぶこともできるからいい、なんていう浮かれた提案だ。 「……なつきはそれでいいの?」 「はい」 笑顔を作ると彼がはにかんだ。 「……いや照れくさい。別のにしたら?」 「私だってそうでしたよ」 「仕返しか?」 「そんなことはしませんよ」 「本当かよ?」 彼が小さく笑った。 「本当です。“りーちゃん“がダメなら”りっちゃん”とか……」 「もうどっちでもいいよ」 恥ずかしいのか、ぶっきらぼうに言うので笑ってしまう。 「じゃあ”りーちゃん”がいいです」 「おぅ」 「いいのですか?」 「いいよ」 「ありがとうございます。嬉しい……。じゃあもしまたいつか何かやってくる時は、今度は三上さんの番ということにしましょう」 それから私はバスケットの蓋をそっと開け「ね、りーちゃん」と声にした。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加