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同時にはるの攻撃を受け止めた反動で後ろに身体が傾くが、理巧さんに抱えられた。
「なつき?なつき大丈夫か!?」
理巧さんの焦る声が近くでするのに、息が上手くできず答えられない。
彼の私を覗き込む顔は不安でいっぱいだ。
私のせいでこんな顔をさせている。
せめて、“大丈夫”と笑顔を作りたいのに、痛みのショックに耐えられず、座り込んでしまった。
「なつきちゃん、大丈夫!?」
原口さんが理巧さんのすぐ隣にしゃがみこみ、切りつけられた場所に触れる。
「なつき!何でだよ!」
はるまで私の前に屈んだ。
顔を真っ青にしたはるが、視界に映る。
「俺は、俺は……なつきを傷付けるつもりなんてなかったんだ……」
何てことを言うのだろう。
こんな人と付き合っていたなんて、と改めて思う。
“私でよかった。理巧さんでなくてよかった”
心からそう言いたいと思うのに、声はまだやはり出ない。
出るのは「ん……」という痛みの唸り声。
だから代わりに、私は強く、とても強くはるを睨んだ。
「なつき……」
もう、やめてーー。
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