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次の瞬間、理巧さんがはるを腕で突き飛ばした。
理巧さんは私を抱えているから、力は軽かったはずだ。
それでもはるはナイフを持って向かってきた時とは別人のように弱々しく、簡単に地面に倒れ込んだ。
「なつきに近付くな」
それから理巧さんは私の視界からはるを隠すように、理巧さんのジャケットを彼の腕にカーテンのようにして掛けた。
「なつき、大丈夫か?」
私は首を縦に何度も振る。
「なつきちゃん、今外科医を連れてくるから、待ってて。大丈夫だから」
原口さんが立ち上がった時、テラスの入り口の方から「あそこです!」という声と共に多くの足音が聞こえてきた。
誰かがスタッフを呼びに行ってくれたに違いない。
そんな中「なつき、なつき……」というはるの頼りない声も聞こえる。
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