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だがその声は徐々に遠退いていく。雑音がするので、きっとはるは捕らえられたのだと思う。
「大丈夫か、なつき……?」
「……はい」
ようやく出た声は自分でも驚くくらい掠れていた。
「痛いよな……ごめん、庇えなくて……」
彼は庇おうとしてくれた。
「……ケガをしなくてよかった……」
首を横に強く振ったため、くらりと目眩がし、理巧さんにさらにもたれかかる。
「なつき……!?」
「……大丈夫です」
理巧さんの瞳が苦しく細まるから、大丈夫だと今度こそ小さく笑みを作った。
それなのに、悲痛な表情を向けられる。
「三上、連れてきたぞ!」
「……あぁ」
「なつきちゃん、大丈夫かい?」
原口さんと共に見知らぬ男性が私の側に膝立ちし、肩に触れた。
「出血がひどいな……」
「縛っていいか?」
「あぁ」
原口さんがスカーフを広げて、私の肩辺りを縛り始めた。
「彼女は大丈夫ですか?」
「出血は多いですが……そこまで深くないように思います」
「本当ですか!?」
「えぇ。すぐに縫合すれば大丈夫でしょう」
それだけですんだのかーー。
三人の会話を聞き、密かに少し安堵する。
「他は大丈夫ですか?」
医師の問いかけに首を縦に振る。
「そうですか、よかったです。今、救急車を呼んでます。大丈夫ですからね」
「はい……」
「なつき、大丈夫だぞ」
理巧さんの声が安心する。
私は瞳をゆっくり閉じた。
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