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救急車が到着したのはそれから少しして。
病院へと向かい、すぐに20針ほど縫ってもらった。
パックリと切れていたようだ。
念のためレントゲン写真を撮り、他も診察してもらったけれど、打ち身や骨折などもなかったから、入院はせずに帰宅できることになった。
発熱が予想されるのと、痛みがひどくなるだろうから、と抗生剤と強めの痛み止めを処方されて、診察室を出る。
「傷が残らないみたいでよかった……」
理巧さんがホッと胸を撫で下ろす。
原口さんの知り合いの医師は、幸運なことに縫合がとても得意な医師だった。
丁寧に縫ってくれたらしいので、傷はほぼ残らないと言われた。
それに安心したのは理巧さんだ。
私は傷くらい残っても平気だ。理巧さんが無事ならばそれが何より。
「はい。ですが、結婚式のドレスは気を遣わなくてはいけなくなりそうです。すみません……」
デコルテが綺麗に出るドレスを一着選んでいた。
もしかすると、傷が目立つかもしれない。
多忙の中、何度も二人で足を運んで決めたものなのに、また一から決めることになるかもしれないと思うと申し訳ない。
「そんなことはいいよ……。本当に俺が守ってやれれば……」
「私は理巧さんに何もなくてよかったです」
理巧さんが泣きそうな顔で私の肩を優しく抱く。
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