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「でも、本当に……よかった。なつきを失うかと思った……」
「理巧さん……」
彼の手が僅かに震えている気がする。
「もし別の場所に刺さっていたかもしれないと思うとゾッとする」
「……」
目の前で恋人が刺されたのだ。
私だって彼の立場になればきっと同じだと思い、何も言えなくなった。
「もう二度とあんなことはするなよ」
「心配をかけてごめんなさい。
でも、あの時は身体が勝手に動いてました……。
ただ……後悔はしてません。
理巧さんが無事でよかったと、本当に思っています。きっと私は今日と同じことが起きても同じことをしてしまいます」
理巧さんのためなら、はるに立ち向かえる。
もうはるなんて怖くないーー。
「なつき……」
彼は苦しげに私を呼ぶとより肩を抱き寄せた。
その瞬間肩が痛み、思わず「んっ!」と声を出した。
「悪い、痛かったな」
「いえ、ごめんなさい。大丈夫です」
理巧さんはより優しさを意識するように私に触れ「家に帰ろうか」と言った。
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