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自然に手は震えていた。
理巧さんが私の手の甲に彼のものをそっと重ねた。
「ついさっき、彼の家族から連絡が来たんだよ」
「はるの……?」
「あぁ。事件を表沙汰にしたくないんだろう、示談にしてくれないか、と……」
はるの家はそれなりに裕福だ。
それなりの慰謝料を支払うつもりなのだろうかと予想したが、その通りだった。
それだけじゃない。
「彼の家族はあいつを海外に行かせると言っている。もう二度と俺たちの前に現れないようにするから示談にして欲しいと訴えてきた。
あいつがなつきを傷付けてしまったことを後悔しているらしいと言ってはいたが……」
彼は悩ましげに頭を抱え、小さくため息を吐いた。
「なつきは……どうしたい?示談にした方がいか?」
私はすぐに頷いた。
だって、もう関わりたくない。
掘り返したくない。
忘れたい。
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