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「は、はる……?」
ゾッとした。
はるはテラスの入り口におり、短いナイフを手にしていて、ゆっくりとこちらへ近付いてくる。
目付きは鋭く、狂気を含んで見える。
すごい形相だ。
「俺のなつきを返せ」
低く唸るような声で理巧さんを睨み、距離を縮めてくる。
「はる!何考えてるの……!?」
「なつきを返してもらいに来た」
“まだ私にこだわっていたの……?”
もう随分会わなくなって経つのにーー。
「……なつきはお前のものじゃない」
はるの目付きはより鋭さを含む。
「俺のものだった。お前が現れる前は」
「はる、バカな真似はやめてよ。落ち着いて……!」
これはヤバイ状況だ。
そう強く思った時だった。
「お前さえいなければ……お前さえーー!」
はるは大きな声を上げて理巧さんへと向かってくる。
体育会系のはるだ。足は速い。
このままでは理巧さんがやられてしまう。
理巧さんが庇おうとして私の身体を後ろに隠したけれど、私は彼の腕をすり抜けて彼の前に立った。
「なつき!」
理巧さんは声を上げたけれど、私は腕をいっぱいに広げて、はるの攻撃に構える。
するとすぐ、右肩の辺りに熱い油を被ったような激しい痛みを感じた。
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