はじまりの夜

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ーーひと月後。 空は晴天、外はうだるような暑さをお日様が放っている中、冷房のガンガン効いた会社の会議室で、私とそして春立さんは会議室にいた。 それは甘いものではない。 それぞれの部署の社員らも大勢おり、会議中である。 春立さんは企画構築のプレゼン中だ。 数ヵ月後、安村製菓は菓子の甘い香りのする香水を発売する予定である。 そのため春立さんは、ひと月ほど前に流通ルートの確認や調整のために出張に行っていたし、最近も何かと忙しくしている。 新たな試みのため、平野部長をはじめとした上司らと問答を繰り返している。 私はまだまだ若手なので、それらのメモをとっていた。 スマートに上司らに説明する春立さんは素敵だ。 見惚れる。 だが、同時に輪島さんとの関係も気になる。 春立さんに一番近い距離に輪島さんは座っており、時々話をしている。 離れた席に座る私には、内容が聞こえない。 美人な輪島さんとスマートな春立さんはお似合い。 “二人は付き合ってる” 春立さんと輪島さんの噂は、私が気にし始めたからか何度か耳にしている。 私と春立さんはというと、初めて身体を重ねた日以来、週末は彼の家に呼ばれ、会いに行くという流れができている。
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