はじまりの夜

24/38
前へ
/38ページ
次へ
輪島さんに週末、春立さんに抱かれていると言いたくなる。 嫉妬だ。 醜い感情が沸き起こっていた。 会議は終わると、輪島さんに声をかけられた春立さんは二人だけで話始めた。 輪島さんは長身なので、二人は近距離。親密そう。 なんとなくだが、二人に対し他の社員らが温かい目を向けている気がして、目を逸らす。 まるで公認のカップルみたい。 ーー見たくない。 早く会議室を出てしまおうと「失礼いたします」と言いつつ退出する際、私と春立さん視線がぶつかった。 “ドキリ” 胸が高鳴る。 けれど、彼はすぐに輪島さんへと視線を変えた。 当たり前だ。 笑いかけて“奈々”なんてここで呼ぶはずない。 身体を重ねても、お互い何もない顔をして仕事をする。 わかっていても切ない。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

130人が本棚に入れています
本棚に追加