はじまりの夜

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そして、この場から走り去りたくなる。 しかし、そういうわけにはいかない。 「お疲れさまです」 佐藤さんが二人に反応した。 私も振り返らざるえない。 「お疲れさまです」 私の声はとてもとても小さくて、消えそうなものだった。 とても春立さんを見られない。 輪島さんに視線を向けると、彼女は佐藤さんと私を交互に見て「お疲れさまー」と明るい声をあげた。 美人で大人。 仕事もできて優しい。 輪島さんは好きな先輩の一人だ。 気さくに“奈々ちゃん”と、私を呼んで可愛がってくれる。 「奈々ちゃん今日はお弁当じゃないんだ?」 「はい。今日は作る時間なくって……」 “私、笑えてる?” 無理矢理の笑顔を乗せる。 「そう。でも感心よー。私なんて作ってきたことないのよ。えらいわ」 「いえ、毎回簡単なものばかりです……」 それに対し、美しい笑顔を乗せる輪島さんは完璧で、今の私には眩しく視線を逸らしてしまった。 嫉妬だ。 すると、佐藤さんが「そう?この間も肉巻き美味しかったけど?」と割った。 佐藤さんには何度かつまみ食いをされたことがある。 その代わりにお菓子をくれるので、毎回許している。 しかし、助かった。 輪島さんと二人での会話は今はきつい。
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