はじまりの夜

32/38
前へ
/38ページ
次へ
会いたかった。 そう思っていたぶん、春立さんの顔を目に入れた瞬間、飛び付きたくなるくらい心が喜ぶ。 彼の下へ駆ける足も軽い。 「春立さん、すみません。来てくれてありがとうございます」 「ううん、会えて嬉しいよ」 “本心?” 疑うけれど、喜びが大きい。 軽い足取りで車に乗り込む。 シートベルトを締めてすぐ、彼がキスをしかけてきた。 甘いキス。 彼の唇が唇から離れると、春立さんのシャボンの香りがふわっと漂った。 「さて、どうする?どっかで夕食食べよっか?」 春立さんは私の予定がなくなった理由も聞かない。 普段通り。 それでも今は春立さんがいることがなにより嬉しい。 「今日は春立さんのお家で食べませんか?」 彼の腕をギュッと掴んだ。 彼が欲しい。 その意思が伝わったのか、彼は「了解」と言って、車を発進させた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

130人が本棚に入れています
本棚に追加