はじまりの夜

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春立さんは行為後もやっぱり優しい。 今夜もそうだった。 彼に優しく髪をすかれながら、お喋りをするのが好き。 「今週は会えてよかったよ。俺、来週出張なんだ」 彼が出張でいないのはよくあること。 将来有望な春立さんは出張、研修といないことも多々だ。 「そうなんですね、寂しいけど頑張ってください」 「可愛いこと言うね」 優しいキスを落とされる。 やっぱり会っていて正解だった。 二週間、彼の温もりから離れるなんてできない。 来週のぶん。 そう言い合って、日曜日も彼と何度も抱き合った。 幸せだったのは日曜日まで。 月曜の朝、私は知りたくなかった事実を知らされる。 唯ちゃんに会社のエレベーターでたまたま会い「おはよう」と挨拶をし合った後のこと。 「ねぇ、今週末の出張で春立さんと輪島さん一緒に出張行くんだって?」 春立さんが出張するのは知っている。 しかし、輪島さんのことは知らない。 「……え?」 「なんかさ、部長とか課長とか、あからさまだよね。くっつけようとするのミエミエ」 キャハハと笑う唯ちゃんを、私は少しも笑えず見つめる。
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