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ーー金曜日の夕方。
春立さんのデスクは今朝から空席。
輪島さんのデスクも同じく空席である。
二人は今頃共にいる。
“今晩は二人で食事をするの?
その後は?
春立さんは輪島さんを抱くの?”
考えただけで、ため息しかでない。
「冷たっ……!」
突然の頬に当たった冷たさに身体をビクリとさせた。
「ため息ばっかだな」
「佐藤さん……」
その正体は紙パックのカフェオレだ。
「何かあったか?」
彼は「それ、やるよ」とそれを私のデスクに置いた。
後輩を心配する先輩らしい彼の優しい一面に、心は少しだけほっこりする。
「ありがとうございます」
「どうした?何があったんだ?」
「……いえ」
「春立さんたちのことが気になる?」
佐藤さんは私の気持ちにもう確実に気付いている。
どうごまかしていいのかわからない。
「どうだ?今夜飲みに行くか?」
一人でいたくない。
佐藤さんに私の心の弱味を暴かれてしまうかもしれないけれど、負けてしまう。
「安くて美味しい焼き鳥屋見つけたんだ?おごるよ」
春立さんとは付き合っているわけじゃない。それに佐藤さんは仲のいい先輩で、よく飲みに行っていたじゃない。
“……暴かれるかもしれないけれど、いいよね?”
私は自問自答し、「じゃあ、少しだけ」と頷いた。
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