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聞き耳をたててしまう。
「私、ちょこっと課長に用があるから先に行ってて」
「おぅ」
「また後でね」
“デートの約束?”
私との約束はいつもこそこそしたものだ。
それなのに、会社の中で周囲に聞こえるような声で平気で約束を取り合う仲なのだ。
二人の仲はやはり、私が想像しているものなのかも……。
胸が痛い。
「お疲れさまです。戻りました」
輪島さんの大人の香りが漂い、苦しくなった。
後ろでは春立さんの声が同じく聞こえてくる。
どうして同じフロアなのだろう。
こっそり見つめている時の方が幸せだったかもしれない。
もう、自然にフェードアウトできないところまできた。
私は二人の仲を確かめたくて、帰宅するふりをして輪島さんを追った。
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