揺れる恋心

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いつもの店、というのは佐藤さんや私を含め仲のよい職場のメンバーで集まる会社から徒歩三分くらいの距離にある居酒屋だ。 ボリュームが多いわりに安いので人気店だが、火曜の今日は空いていた。 「今日はレディースディだってよ。一杯目は無料だそうだ」 「わぁ、それはいいですね」 いつも金曜の夜なので、全く知らなかったが、女性に嬉しいサービスである。 「メンズディも作ってもらいたいもんだな」 そんな会話をしながら、密かに先日の告白を思い返すけれど、佐藤さんは普通でホッとする。 彼は本当にいい人だ。 「飯島ってほんと酒強いよな」 ビールをジョッキ二杯飲み干した時、しみじみと言った佐藤さんの言葉に苦笑した。 「可愛げがなくてすみません」 肩を竦めつつ、ジョッキをテーブルの端に置いた。 「男性は、“酔っちゃった”って甘える女性が好きですよね」 輪島さんは私ほどアルコールに強くない。 今頃、春立さんの肩にしなだれかかってたりして……。
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