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考えると苦しい。
酔いたい。
ますますアルコールに甘えたくなる。
「いやいや、“酔っちゃった”っていう時点で酔ってないだろ。
俺はそういう、かまってちゃんは苦手だ」
佐藤さんは“ははっ”と笑う。
「かまってちゃんって……」
ひどいいいようだ。
「一緒に飲める女の方が楽しいよ」
それはまるで私のことを指しているようで、何も言えなくなった。
「もう一杯、頼むか?」
「……明日、仕事ですけどいいですかね?」
佐藤さんが軽く吹き出す。
「俺に“飲めよ”って言ってもらいたいんだろ?」
その通りだ。
理由が欲しいのだ。
よくわかっている佐藤さんを上目遣いに見つめ苦笑した。
「ビールでいいか?」
「お願いします」
「了解」
彼はよく通る声で“すみません”と店員を呼び、注文する。
その横顔を見つめる。
春立さんの涼しげな横顔とは違うけれどこか温かくてホッとする。
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