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「佐藤さんって長男ですか?」
「おぅ」
「やっぱり。面倒見いいですもんね」
きっとよい兄なのだろう。
簡単に想像ができる。
「飯島は末っ子だろ?」
「……当たりです。よくわかりましたね」
甘え下手なので、なかなか見抜かれないのに彼はすごい。
「飯島のことならわかるよ」
「……」
真剣な瞳だ。
胸が苦しくなる。
“いつも見てるよ”
その想いが伝わる。
「これでも先輩やってんだから」
それでも気にさせないように、明るく立ち回る佐藤さんに感謝する。
春立さんへの想いを止めて、佐藤さんを想えたら、どんなに楽だろう。
でも、私が欲しいのは春立さんだ。
欲しくて欲しくてたまらない。
恋に落ちてまだ少し。
それなのに、こんなにも焦がれている。
春立さんのことは、深く知らないくせに……。
それに、私がどれだけ春立さんのことも想ったとしても、彼が私を好きになってくれるとは限らないのだ。
先行きの見えない恋。
まさか、私がこんな恋をするとは思わなかった。
でも、少し前の気楽な自分を思い出せない。
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