迷いの中で

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「佐藤さん、私だって本当はこんなですよ?知らないんですか?」 両手を顎の下に置き、上目遣いに彼を見つめ、可愛さを意識してワントーン高い声で言った。 すると佐藤さんは“ぷはっ”と吹き出す。 「飯島がすると可愛いかも」 ーーかぁ。 私は何をやっているのだろう。 「気持ち悪いことをしてすみません」 「気持ち悪くねーよ、ほんと、可愛かった」 「……やめてください。すみませんでした」 恥ずかしくて死ねる。 私にぶりっこは似合わない。 「飯島なら多少ぶりっこでも好きだよ、俺」 「もう、忘れてください」 時間が巻き戻ればいいのに。 「本当に」 困るよ。 突然真剣な顔を作られると、胸が締まる。 「佐藤さん、私は前も言いましたけど、佐藤さんを先輩以上には見られません」 けれど、好きなのはやっぱり春立さんだ。 こんなに想われているのに、どうしてーー。 「わかってる。それでも奪いにいくって思ってるから、飯島は普通にしてろよ」 「でも……」 「コーヒーお代わりするか?」 今度は佐藤さんが話を変える番。
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