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電話をかけ直したけれど、彼の方が今度は繋がらなかったのだ。
“ーー電波の届かないところにおられるか、電源を……”という寂しいアナウンスを聞いた時のあのショックを今も引きずっている。
早く、会いたい。
「どうした?突っ立って」
佐藤さんだった。
彼は私の背をトンと叩き、顔を覗き込んできた。
いつもの彼の顔だ。
ホッとする。
「いえ、おはようございます」
「おはよう。大丈夫か?」
「はい」
「そう」
そこに同じ課の社員が「朝から熱いな」と茶化し通りすぎていく。
もう慣れた普段の光景。
だが今朝は佐藤さんが「俺たち付き合ってないですよ」と初めて否定した。
「またまたぁ」
「本当です」
信じてもらえなかったけれど、佐藤さんは私とのことを整理したのだろうと感じた。
きっと、これから徐々に戻っていけるはずーー。
問題は私と春立さんのことだ。
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