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「頭を上げてください」
「あ、あの、告白してくれてありがとうございました」
きっと、すごく勇気を出してくれたのだから、そこはちゃんと伝えないといけない。
「あぁ、くそー春立さんが羨ましいです」
「悪いな」
「本当に好きだったのになぁ……。今日はやけ酒します」
春立さんが苦笑している。
これが現実のこととは思えない。
男性社員が「失礼します」といなくなると、私と春立さんの二人きりになる。
彼の手はすぐに離れた。
“もしかして、俺のなんて言ったのは、遊び相手が取られると思ったから……?”
一瞬で不安に襲われる。
「奈々」
でも、彼の声は真剣。
怖さでいっぱいなのに少しだけホッとする。
「……はい」
「話がしたい。今日こそ話をしないか……?」
切なくすがるような瞳を向けられる。
こんな表情は初めて見るかもしれない。
「わ、私も話をしたいと思ってました」
期待と恐怖。
対極の思いを胸に、彼を強く見つめた。
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