迷いの中で-2

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頭の中に浮かぶのは一人しかいない。 春立さんは玄関で話をしているので、あまりここまで声が届かない。 時々聞こえる笑い声に親しい人からだとわかるくらい。 近くに行きたいくらいの気持ちだが、我慢。 「お待たせ」 彼が戻ってくるまで三分ほどだったけれど、私にはその倍の倍くらいに感じた。 “誰ですかーー?” 気になっているけれど、聞けない。 「いえ」 背をピンと正して、彼が同じ場所に座るのを待った。 腰を下ろした時には安心した。 “出掛けることになった” なんて、少し最悪な展開を想像していたから。 春立さんは一息吐くように、コーヒーを飲んだ。 つられて私も。 甘ったるい好みの味。 けれど、緊張でもたれそう。 「奈々ちゃん」 彼がカップを置いて、私を見つめた。 「……はい」 「奈々ちゃんと初めて二人きりになったマーケ部の飲み会の日のことは覚えてるよね?」 「もちろんです」 春立さんとの始まりの日。 忘れるわけがない。
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