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「佐藤さん、でも……私……」
ーーバタン。
大きな音を立てて、私の身体がフローリングに押し付けられた。
「……さ、佐藤さん……!?」
佐藤さんの身体が被さり、私の身体を覆う。
顔と顔の距離はお互いの息がかかるくらい近い。
気を緩めると、キスをしかけられそうな距離だ。
「飯島が好きなんだ」
彼の色のこもった視線が痛い。
私もきっと、春立さんに迫るとき、同じような視線を向けていたに違いない。
こんな状況であるのに、あの日のことを思い出す。
やっぱり私の心には春立さんがしっかりいるみたい。
佐藤さんの顔が近づいてくる。
間違いなくこれが春立さんならば、瞳を閉じて受け入れていたに違いない。
ーーけれど……。
「ダメです、佐藤さん……」
くっついた身体から手を抜き、佐藤さんの唇に当てた。
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