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「ダメですよ」
熱気を感じる手はそのままに、首を左右に振った。
「私はやっぱり春立さんが好きです」
「……飯島」
佐藤さんの瞳は頼りなく下がる。
「それにこんな形で佐藤さんと関係を持って、先輩以上の関係になったら絶対に後悔します」
傷心で甘えた私が悪い。
佐藤さんは悪くない。
「ごめんなさい。一生懸命想いを伝えてくださったのに……」
「……俺こそ、悪かった」
彼は私の上から退き、離れた。
そして、背を向ける。
その後ろ姿はとても切なく映り、胸が痛い。
どうして佐藤さんではダメなのだろう。
でも理屈では言い表せない。
私は春立さんが好きなのだ。
「佐藤さん、ごめんなさい」
「……二度フラれてしまったな」
佐藤さんがははっと元気なく笑う。
私はひどい女だ。
泣きたいのは間違いなく彼なのに、涙が出た。
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