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「だいぶ涼しくなったな」
「そうですね」
「俺は秋が一番好きだ」
「あぁいいですね、食欲の秋」
「飯島は食欲より酒欲じゃねーの?」
「……もう。たしかに否定できませんがひどいですよ」
佐藤さんを小さく睨んで見せる。
彼は、ははっと笑った。
ーー大丈夫。
普段の私たちの関係のようでいられている。
佐藤さんがいい人なので場を保てているのだろう。
どうか明日からもいい先輩でいて欲しい……。
密かに思いつつ、彼の横を歩いていた。
佐藤さんは駅に着くと「じゃあまた明日な」と言って大きく手を振った。
「……はい。明日」
「おやすみ」
「おやすみなさい。ありがとうございました」
深く頭を下げて、駅の中へ進む。
振り返り佐藤さんが見えなくなるのを確認すると、立ち止まりバッグを漁る。
まだ21時前。
春立さんに電話をかけても大丈夫だろう。
そう思いスマホを手にしたけれど……。
「……嘘」
なんてことだろう。
充電切れーー。
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