幸せへと向かって

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「実は俺、あと半年で会社を辞めるんだ」 “ーーどういうこと?” 頭が真っ白。 思考停止。 「驚くよね」 苦笑いする春立さんに笑い返せない。 「……は、はい」 びっくりしない人の方が少ないと思う。 なぜ会社を辞めるのだろう。 安村製菓はそれなりに大手である。 それに春立さんは将来有望人物なので、辞めるなんて勿体ない。 絶対上にいくであろう人なのにーー。 「一部の人にしか話してないけど、家業を継ぐことになったんだ」 「家業……」 さらに驚きが襲う。 「あぁ」 「えぇ……。そうなんですか……」 「うん」 「ご実家、農家とか旅館をされている……とかなんですか?」 家業を継ぐと聞き、思い付くのはそれくらい。 なんてボキャブラリーの少ない私だろう。 「いや……」 春立さんが苦笑する。 そして、控えめに「実家は、harutaなんだ」と言って、手を離した。 それを聞き思い付くのは、株式会社haruta。 それは菓子や乳製品を生産、販売している会社である。 ロングセラー商品もいくつかある、有名な会社だ。 言葉を発せられない。
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