幸せへと向かって

3/23
前へ
/23ページ
次へ
「俺には兄が二人いて、本来長男が継ぐ予定だったんだけど、長男は元々病気がちでずっと入退院を繰り返してて、身体のことを考えると荷が重いっていう長男の希望で、次男か俺かっていうことになってさ、俺が継ぐことになったんだ」 「長男さん、大丈夫なんですか?」 「うん。ちゃんと治療してるからそこは」 「よかった……。では次男さんは……?」 「次男は自由な性格でね。今は海外でボランティア活動をしてる」 「それはすごい……」 「うん」 だから、春立さんが望まれたということなのだろうか。 上品な顔立ちだとは思っていた。 だがまさか、良家の息子だったとはーー。 「もしかして、安村に入ったのは勉強のため……とかですか?」 「うん。いつか長男の手伝いができればと思ってたから……。実際かなり勉強させてもらったと思ってる」 ドラマみたいな話だ。 こうして真相を聞いても信じられない。これは現実なのだろうか。 「奈々ちゃん」 「……はい」 「俺さ、奈々ちゃんに会う度に惹かれていったんだ」 「……」 突然話は巻き戻される。 恥ずかしさも同時にやってきた。 「でも、惹かれていくと同時に、ちゃんと付き合っていいものか悩んだ」 春立さんが苦しそうに瞳を細めた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加