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「俺には兄が二人いて、本来長男が継ぐ予定だったんだけど、長男は元々病気がちでずっと入退院を繰り返してて、身体のことを考えると荷が重いっていう長男の希望で、次男か俺かっていうことになってさ、俺が継ぐことになったんだ」
「長男さん、大丈夫なんですか?」
「うん。ちゃんと治療してるからそこは」
「よかった……。では次男さんは……?」
「次男は自由な性格でね。今は海外でボランティア活動をしてる」
「それはすごい……」
「うん」
だから、春立さんが望まれたということなのだろうか。
上品な顔立ちだとは思っていた。
だがまさか、良家の息子だったとはーー。
「もしかして、安村に入ったのは勉強のため……とかですか?」
「うん。いつか長男の手伝いができればと思ってたから……。実際かなり勉強させてもらったと思ってる」
ドラマみたいな話だ。
こうして真相を聞いても信じられない。これは現実なのだろうか。
「奈々ちゃん」
「……はい」
「俺さ、奈々ちゃんに会う度に惹かれていったんだ」
「……」
突然話は巻き戻される。
恥ずかしさも同時にやってきた。
「でも、惹かれていくと同時に、ちゃんと付き合っていいものか悩んだ」
春立さんが苦しそうに瞳を細めた。
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