幸せへと向かって-2

22/23
前へ
/23ページ
次へ
この日は少し残業だったものの、退社時間が彼と重なった。 会社を出てしばらく、彼の方から手を握り、二人で夜道を歩く。 あとこの道を二人で歩くのはどれくらいだろう。 少し切ない。 「奈々の手昼間より温かいね」 「思い出させないでください。恥ずかしかったです……。絶対唯ちゃん気付いてましたよ。後ろの人だって……」 手を繋いでいるところを見られていたに違いない。 「奈々は俺のものだーって皆に知れ渡っただろうからよかったよ」 彼は色っぽく笑った。 「もう知られてますよ、じゅうぶん……」 かなりの噂になっているのを彼だって知っている。 「それでもだよ」 彼は強く手を握りしめた。 恥ずかしかったけれど、私だって本当は嬉しかった。 こんな甘い彼も好き。 それが彼に伝わったのだろうか。 「奈々、好きだよ」 甘い告白に胸が震える。 「私も好きです」 「これからもよろしくね、奥さん」 「……はい」 私たちは見つめ合い、そっと口付けを交わす。 夜の風が、私たちの間を甘く駆け抜けていった。                   ーendー
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加