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この日は少し残業だったものの、退社時間が彼と重なった。
会社を出てしばらく、彼の方から手を握り、二人で夜道を歩く。
あとこの道を二人で歩くのはどれくらいだろう。
少し切ない。
「奈々の手昼間より温かいね」
「思い出させないでください。恥ずかしかったです……。絶対唯ちゃん気付いてましたよ。後ろの人だって……」
手を繋いでいるところを見られていたに違いない。
「奈々は俺のものだーって皆に知れ渡っただろうからよかったよ」
彼は色っぽく笑った。
「もう知られてますよ、じゅうぶん……」
かなりの噂になっているのを彼だって知っている。
「それでもだよ」
彼は強く手を握りしめた。
恥ずかしかったけれど、私だって本当は嬉しかった。
こんな甘い彼も好き。
それが彼に伝わったのだろうか。
「奈々、好きだよ」
甘い告白に胸が震える。
「私も好きです」
「これからもよろしくね、奥さん」
「……はい」
私たちは見つめ合い、そっと口付けを交わす。
夜の風が、私たちの間を甘く駆け抜けていった。
ーendー
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