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ーー金曜日の午前0時少し前。
仕事に夢中になりすぎており、戦略部で残っているのは俺一人ということに気づき、「そろそろ帰るか……」と一人ため息を吐く。
“うーん”と伸びをしつつ立ち上がった時、マーケ部に人影が見えた。
それが奈々だと気がついたのは、彼女の側に近付いた時だ。
大量の資料に挟まれて見えにくかったため、彼女のデスクへ足を向けたのだ。
「え、あ……春立さん、お疲れさまです」
奈々と二人きりで話をするのはこれが初めてのことだった。
「お疲れさま、飯島さん」
まだ入社して一年経たない彼女とは、二、三度会議で一緒になったことがあるくらいだ。
「こんなに遅くまで残業?もう明日になるよ」
奈々は輪島に付いているのをよく見かける。
こんなに遅くまで後輩に残業させて何をやってるんだ、と輪島に対して思った俺に、奈々は爽やかな笑顔を向けた。
「いえ、残業するほどの仕事はまだ与えてもらっていません。少し勉強を……」
「勉強?」
「はい。次の会議のために昔の資料を頭に入れておきたくて、資料室からお借りしたものを見ていました」
彼女を囲んでいる資料は社外秘で持ち出すことができないものだ。
「なるほど……」
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