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「春立さんも残られていたのですね」
「あぁ、でも俺はもう帰るよ。飯島さんは?」
「私はもう少しだけ勉強します」
「そう」
「はい」
「偉いね」
「いえ……」
彼女は首を左右に振って、はにかむ。
その表情は可愛くて、胸が僅かにドキッと鳴った。
「よかったら、読み終えた分、資料室まで運ぼうか?」
「え!?」
「こんなにたくさん運ぶの大変だったろう?」
きっと何往復もしたに違いない。
俺は大量の資料に視線を向けつつ、小さく笑って見せた。
「……あ、いえ……」
大変だった。
そう奈々の顔には書いてある。
わかりやすいのが可愛くて、ぷっと吹き出してしまう。
「もう使わないのはどれ?」
「あ、いえ、大丈夫です……」
「いいよ。俺、今から煙草吸って帰るつもりだったから」
喫煙所は資料室の近くだ。
「……すみません」
奈々の眉が申し訳なさげに下がる。
その表情も可愛いくて、癒される。
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