涙と宝石

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涙と宝石

日曜日。 僕は隣町まで出てきていた。 目的は高校生の作品を集めた、とある絵画展。 春のコンクールで優秀な成績をおさめて作品を展示している。 ……正直行くか行かないかはかなり迷った。 現在全く絵を描いていないうえ、これからも描くのかどうかわからない僕が行く意味などあるのか。 会場でかつての知り合いに会ったら面倒だ。 だいたい遠いし。せっかくの日曜だし。あと暑い。今日の最高気温は35度だってさ。 そんな自分でもクソだと思うような理由をはねのけ、結局行くことにしたのは今朝の父の言葉が原因だ。 少し遅めの日曜の朝食。 食パンにかじりつく僕の方を見ず、新聞に目を落としたまま、父は例の絵画展の名前を出した。 『……いかないのか、百音』 僕が答えあぐねていると、今度は顔をあげ、僕の目を見る。 『絵はもうお前には必要ないのか』 パンを手に持ったまま動けなくなった僕に、父は最後にこう言った。 『即答できないなら、絵を見てきなさい』と。 すべてを見透かされているような気がした。
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