赤く燃える。

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「それとなく引き継ぎらしいことをやっていたのは、これのためでしたか。ちなみに、次はもちろん決まっているんですよね? 大見栄をきって飛び出すだけなら、承知しませんよ」  鋭い目つきで、厳しい口調ながら、彼女なりの心配の声をあげてくれたのは、さやかだ。  いつだってそうだ。さやかは冷静沈着で、客観的な意見をくれた。  仲間が感情的になりそうな時ほど落ち着いて考えを巡らせ、皆が判断する手助けをしてくれる。それでいて、それとなく気遣いも見せてくれるのだ。  その頭の回転の速さに、どれだけ助けられたことか。  さやかが示してくれた気づきは、僕自身にもひらめきを授けてくれた。 「もちろん。次の職場は先月から決まっていたし、残りの引継ぎも資料にまとめてある」  だからこそ、こちらも正直に答える。  別の道を歩むとしても、はぐらかしたりはしない。  さやかは、そうですか、とそっぽを向いてしまったが、表情はいくぶん和らいだように見えた。
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