赤く燃える。

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「所長。みんなも。最後にひとつ、話があるんだ」  場が落ち着いたところで切り出した。  さよならの理由。これだけの仲間に恵まれていてなお、別れを選んだその訳を、どうしても話しておきたかった。 「皆、僕たちの仕事で不思議に思ったことはない? ちょっとした違和感、とかでもいいんだけど」  願わくば、この遠回りな言い方で察してほしい。  それなら心当たりがある。そういうことか。そう言って欲しかった。  しかし、そんな願いも空しく、皆は顔を見合わせるばかりだ。  やはり誰も、誰一人として、気に留めてもいないのか。 「つまりさ。どうして僕たちは同じなんだろうって、不思議に思ったことは?」 「同じってどういう意味?」 「さっきから何の話をしてるんだ?」  冷静に、客観的に見てくれるはずのさやかでさえ、目を瞑って腕を組んだまま、微動だにしない。  僕は、自分の弱さが嫌になりそうだった。  ちゃんと言おうと決めてやってきたのに、決心したはずなのに。  これは、皆の根っこの部分。アイデンティティーに関わるデリケートな問題だ。  言えば嫌われるか、おかしなやつと笑われるかもしれない。  やはりこのまま、それなら良いんだ、と首を振って、綺麗にお別れするのが良いのかもしれない。  「頼む、言ってくれ」  俯きかけた僕の耳に、力強い声が響く。  ああ、そうだ。  ともゆきはいつだってそうだったのだ。  相手が誰であろうとも、まっすぐに、真正面から立ち向かう。  例えそれが、仲間の僕であろうとも。 「わかった。回りくどいのはやめよう」
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