赤く燃える。

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 大きく深呼吸をした。  酸素が体の隅々まで行き渡り、思考をクリアにしてくれる。  ここから先は迷いも誤魔化しもなしだ。尊敬する仲間たちに、僕なりの真実をちゃんと伝えてみせる。 「どうして赤なんだろうって思ってたんだ」 「赤って?」 「どうして僕たちの戦隊は、全員レッドなんだろうってこと」  全員、赤い。  これは由々しき問題だ。  戦隊を名乗るのであれば、カラーバリエーションがあって然るべきではないのか。  百歩譲って、最初から赤をテーマとした、例えば紅蓮戦隊アカレンジャーだとかであったなら、全員がレッドでも構わなかった。  大いにその赤さを見せつけ、必要であれば赤の中で細分化して名乗りをあげていけば良い。グレンマゼンダにグレンクリムゾン、ヒロインはきっとグレンピンクのぎりぎりダイナマイトカラーに違いない。  だが違う。僕たちは、鉄拳戦隊トウコンジャーなのだ。赤を細分化して個性を出せる仕様には、なっていない。 「それって何か問題なの?」 「普通の戦隊っていうのは、色分けがされてるだろ。メンバーの個性を出すために」 「全員レッドの戦隊だって、十分に個性的でしょう」 「そういう奇抜な意味合いじゃなくて」 「まさか、スーツの色分けをしたかったの?」 「スーツだけの問題じゃないよ」  もちろん、スーツも問題ではある。  闘の一文字を額に冠した真っ赤なスーツが五つ揃って登場するのだ。体型でしか見分けがつかないし、全員がトウコンレッドだと名乗りをあげるのだから、これはこれで大問題だ。
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