22人が本棚に入れています
本棚に追加
Transform
チェコのある有名な作家は、目覚めると巨大な虫になっていた男の話を書いた。
同じように、目が覚めたら何かに変身していたという作品は少なくはない。
特に、最近の若者が読むライトノベルと言われる類の小説には、そうした変身がよく描かれるらしい。
僕も物書きの端くれとして、そんな変身物語を書いてみようと思う。
これまでに挑戦したことのないテーマではあるが、僕としては何としてもこの作品を立派に仕上げてみせたいと思っている。
というのも、僕が物書きになったのは、三年前のことだが、デビュー作を除いてまともに売れていない。
とある新人賞に応募し、大賞を受賞したデビュー作でさえ、受賞作史上最悪の売上と酷評されたくらいだ。
大賞を受賞して一人前の作家になれたと勘違いした僕は、会社も辞め、作家業に専念することに決めたのだが、生活費もままならない。
最初の頃は雑誌社の短い論評のような仕事もあったが、今ではそんな仕事もさっぱりなくなり、僕という作家は世の中から忘れ去られようとしている。
日々の生活費は、コンビニの夜間アルバイトでなんとか凌いでいるが、家賃は滞納気味で、先月は電気を止められた始末だ。
編集者からも、次回作がダメなら終わりだと、最後通告まで受けている。
だから、何があっても、僕は失敗することができないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!