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 僕は何だか急に恥ずかしくなって、 「あ、これ、変身をテーマにした小説の資料なんですよ」  と、訊かれてもいないのに、思わず取り繕った。  だけど、彼女は余計に不信感を抱いたのか、 「はあ…………」  と、訝しげな表情を浮かべ、目も合わせずに本の貸出手続を取る。  そんな彼女の態度に、僕は余計に慌ててしまう。 「あの、僕、作家の端くれで、今度、変身をテーマにした小説を書こうと思ってるんです」  言わなくてもいいことだとわかっている。  言ったって、どうせ恥をかくのは僕だ。  有名作家ならまだしも、僕はアルバイトで生計を立てている崖っぷち作家なのだから。  だけど、『作家』というワードを聞いた瞬間、彼女の表情が変わった。  先程までとは打って変わって、明らかに柔らかく微笑み、興味深そうな視線を僕に向けてくる。 「作家さんなんですか? お名前は?」  彼女の問に、僕は思わず本名を答え、慌てて筆名に訂正する。
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