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そんな少し危なっかしい関係は十年続いた。
私もマルコも大きくなった。
特に彼は村の中でも目立つ好青年へと育っていった。
後にわかったことなのだが、彼は村長の息子だったらしい。
村の取り決めにも顔を出す様になり、村の誰もが彼を慕っていた。
そんな風になっても、彼は変わらず私の元へやってきた。
「村の人たちから何を言われるかわからないんだから、お前はもうここに来ない方がいいんじゃないのか?」
そう言っても、
「いやあ、言いたいやつには言わしておけばいいさ」
と、彼は聞く耳を持たなかった。
私は彼の治める村が大好きだ。
だがそれは、今や刻一刻と見るも無惨な姿へと変わっていっている。
私の大好きだった時計塔は、今ではがれきの山と化しており、地面の近くに僅かに面影が残るばかりだ。
村から湖へ行くための大きな橋は落ちてしまい、今では誰も近づこうとはしない。
世界を見て回った。が、どこもかしこもそうだった。
花畑は踏みにじられ、山肌は露出し、鉄塔も倒れ、人類の息づかいなどもはやどこにも感じられなくなってしまった。
私は目をそらす様に振り返る。
そこには、かつての人類になりかわるように、大きな暗闇が鎮座している。
これは徐々に広がってきている。
私の村も、半分ほどが呑み込まれてしまっているのではないだろうか。
予告された終わりまで、まだまだ猶予はあるというのに、ほとんど抜け殻の様な世界が今、目の前に広がっている。
人類は諦めてしまったのだ。
この不条理に、不都合に、非常識に。
簡単なことだった。この暗闇に身を投げれば良い。
残った僅かな人類は、未だ残っている広すぎる空間に身を寄せ合って生きていた。
世界が終わる。
そんな予言から、既に二百年が経過した。
人類は初め、それを信じようとはしなかった。
けれど、この暗闇が見つかってから、滅びは加速した。
これが初めて見つかったのは、予言がなされて少しした頃、同じく二百年前の話である。
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