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引っ越しの当日。
いよいよ、少女は持っていく絵を決めたようです。
海の絵画も覚悟を決めました。
「私、こっちの、海の絵画をもって行くわ。」
少女はそう言いました。
「え」
海の絵画は驚きました。少女の決定は、とても意外に思えたのです。
海の絵画は、悲しい少女の顔ばかり見ていたので、自分が嫌われていると思っていたのでした。
目を見開いている海の絵画を見て、花の絵画は言いました。
「海さん、私の言った通りだったでしょう。
貴方には貴方の良さがあるって。
ようやく信じてくれたかしら。」
海の絵画は、花の絵画の方に目を向けました。
そういえば、初めて、花の絵画と目を合わせた気がします。
いつも、卑屈になって、花の絵を直視することができなかったからです。
花の絵はそれはそれは優しい微笑みを浮かべていました。
「君は自分が選ばれなくて悲しくないのかい。
僕は、なぜ僕が選ばれたのかまったく見当がつかないんだ。
絵画が夢を見るはずはないが、夢を見ている気分だよ。」
海の絵画は思わずそう言いました。
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