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花の絵画はますます笑みを深くして言いました。
「悲しいけどね、私はこうなるってわかっていたんだよ。」
花の絵画はこう、続けました。
「確かに、私は、あの子の笑顔をたくさん見てきた。
でもね、それは、私を見て笑顔になっていたんじゃない。笑顔のときに見ていただけなんだ。
もちろん、私のことも彼女は好いていてくれただろう。
でもね、彼女がつらいとき、悲しいとき、元気がないときに見るのはいつも君だったんだよ。
君は気付いていないみたいだったけれど、君を見た後は、落ち込んでいた少女の表情はいつも明るくなっていたんだ。」
海の絵画は驚きました。
悲しい顔をする少女を見ることがつらく、自分を見た後の少女の表情を見ようと思わなかったことがなかったのです。
『そんなことがあったなんて、、、』
驚いたと同時に、花の絵画に申し訳なくなりました。
いつも自分を励ましてくれた花の絵画の言葉を憐れみだと感じて、信じようとしてこなかったからです。
謝罪する海の絵画に対し、花の絵は、君がようやく自分の価値に気付いてくれてよかった、と言いながら餞別の言葉を口にしました。
引っ越し業者が、海の絵画を包み始めました。
海の絵画は目を閉じ、新しい家と、少女との新生活に思いを馳せました。
もう、卑屈になるのはやめよう。
そう決心した海の絵画は、いつもよりもきらきらと光り、一層美しく、少女を魅了するのでした。
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