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うっすらと埃がのったカプセルは、大学の付属病院の一室に預けられていた。
「そうだな」
私が彼のことを思い出したのは、助手として初めて与えられた仕事がカプセルの管理だったからだ。その時にも、3日に1度は病院に足を運んでいた。
「この研究所は、君に預けることにしよう」
こうして私はひとり、狭い研究室を任されることとなった。
もっとも、業務は治験対象者の体調管理だ。医者でもない私にできることはたかがしれていて、1日1度の面会以上の仕事はほとんどない。
こうなれば実験をする気も起きず、費用のかかる大がかりな器具は、別の研究室にお譲りした。
「彼もきっと若い女性の方がいいだろうからね」
治験対象者が社会復帰を果たした暁には、手元の記録帳とレコーダーを教授に送りつけてやろうと考えている。
大手製薬会社が既に過去のものとなっている実験に興味を示すとも考えられないが、これは私の意地だ。
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