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め……るの……
めざ……ので……
……
……
……目覚めるのです。
何処からか声が聞こえてくる。
眩しい光に包まれ、私はゆっくりと瞼を開いた。
「お待たせしました、ありす御嬢様。私は……」
目を疑った。
天蓋付きベッドから体を起こすと、30センチほどの小さな雲に乗った、キラキラと光るタコが視界に入る。
「……寝室に忍び込むなんて大胆不敵ね」
「随分と探しましたよ。このお屋敷、広すぎやしませんか? 危うく迷子になりかけました」
「……」
噂で聞いた事がある。誕生日にタコの神様が現れると、願いを叶えてくれるらしい。でも、私は誕生日どころか誕生月ですらない。何をしに来たのだろう?
取り敢えず触ってみた。柔らかいゴムボールのような弾力で、ちょっと気持ちいい。
「あっ……ダメ……そんなところを触っては……」
顔を触っただけだのに、頬を赤く染めて目線を逸らし、うねうねするタコが気持ち悪い。
「セバス、セバス!」
「お呼びでしょうか、ありす御嬢様」
「タコの魔物を見つけたわ。フルコースにして、兄上に毒見させましょ」
「了解しました」
執事のセバスに抱きかかえられ、タコの神様は厨房へと旅立つ。
「世の中には、まだ美味しそうな魔物がたくさんいるのね」
タコが何をしに来たのか分からなかったが、そんな事はどうでもいい。
再び枕に顔を埋め、天蓋付きベッドで夢の世界へと戻ることにした。
【完】
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